共有不動産を自己の持分範囲内で「自由に利用したい」、「売却して現金化したい」、または「共有状態を解消したい」と望むことが多くあります。相続にて取得した共有不動産や、離婚状態の夫婦間に多くあるケースです。ところが、意のままにならないのが共有(名義)不動産なのです。
【 相続にて取得した共有不動産 】
共有不動産の問題・トラブルにも、さまざまなパターンがあります。一例ですが、公道に面して間口が広く、奥行きが短い90坪の土地があったと仮定します。これを親族である
A、B、C の3名が3分の1の割合で共有している場合で、3名が30坪の土地を個々に利用したい時は比較的スムースに解決できるものです。基本的に90坪の土地を道路に面して3分割すればいいことです。また、90坪を一括にて売却して、3分の1の割合で売却金を配分する場合も話もスムースです。
ところが、その土地に C が所有する建物があり居住していると面倒になります。 A と B
は土地を売ってお金を欲しいと主張、C は住んでいるので売れないと拒否すれば問題はとても複雑になります。
A、B は自己所有の土地持分を C に買ってもらうか、トラブルをかかえた共有地として第三者に低額で売却するか、もしくは共有物の分割訴訟による解決(裁判所の判決)など、選択肢は少なくなります。
また、90坪の土地に A がアパートを建築したいと計画しても、B と C が反対をすれば建築はできないことになります。建築するには共有者全員の意思統一が必要であり、B
と C に無断で建築をすれば二人の財産を侵害することになります。以上のように、共有の不動産は流動性・換金性、もしくは収益性に乏しく、資産としても問題をかかえたものでもあります。
弊社の過去の案件に次のようなこともありました。相続により取得した土地建物の共有名義人の一人(長女様)が、その建物に居住している共有者(実兄の長男様)の住宅建替えに対して、イヤガラセを込めて一切の協力をしなかったことです(以後、敬称は省略)。長男は他の共有者(次男と次女)の合意は得ていたのですが、長女だけが建て替えを認めず、共有の持分権利を長男に売却することも拒否し続けていました。目的は「嫌がらせ」の一点だけだったのです。この女性との交渉には困難が多く1年以上を要しましたが、共有名義人の間で売買という方法で解決に至りました。
その方法とは、長女が次女に共有の持分権利を移転し、次女が長男に再移転するという手法です。長女は長男との同じ契約書(紙)には署名したくないとの一心であり、長女と次女間で契約と権利移転をおこない、次女に移った持分権利を長男に再移転したわけです。勿論、この方法は長女を含めて、4名の合意のうえでおこなったものです。長女にとりましては金銭ではなく、「意地」がそうさせていたわけです。
【 夫婦間の共有不動産、離婚による共有の解消
】
夫婦で買った共有名義の不動産があり、後に離婚による共有の解消・整理をする場合では、財産分与か、相互間の売買か、もしくは第三者への同時売却が一般的です。
夫婦が現金を出し合って買った不動産の内、自己の持分を相手方へ所有権移転する場合は障害なく進みますが、住宅ローンを利用して買った不動産では、残債を残したまま名義だけを移転することは基本的にできません。
金融機関の住宅ローン融資は、購入者名義の所有権登記と融資に基づく抵当権設定などを一体として貸付けたものであり、借入金を残したままでの所有権移転は認めません。無断で行えば融資の約定を守らなかったものとして全額返済を要求してくる可能性もあり得ます(期限の利益の喪失)。現金を用意して借入金の全額返済をするか、相手方が新たな住宅ローン資金などでその借入金を返済する必要があります。金融機関に無断での名義変更は要注意です。
【 共有問題の解決、使用貸借の注意 】
親族間の共有問題・トラブルの解決は第三者が間に入り、意見調整をすることが良い結果につながるケースが多いものです。不動産の権利状況・利用状況、土地の大きさ・地形、建物の有無、当事者間の交流状況などにより解決方法は様々です。共有者に相続が発生すれば持分権利はさらに細分化・複雑化することが予測されます。先送りしないことが大切と考えます。
共有とは異なるものですが、親族の土地所有者(たとえば、親)と建物の所有者(たとえば、子)が異なる場合もよくあることです。親族間の賃貸借(借地権)の場合や、親が子に無償で貸している土地(使用貸借地)の場合などがありますが、建物の所有者が土地の所有者に無断での建て替えや、大きな利用変更をすれば問題になりかねません。同じく、土地の所有者が所有権を無断で第三者等に売却をすればトラブルの原因になる可能性が大きいでしょう。 |